《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》 2012年 展示風景 Photo/ 木奥惠三

16年ぶりの大規模回顧展を東京国立近代美術館で開催中の大竹伸朗。1980年代に20代の若さで鮮烈なデビューを飾って以来40年。とりわけ2006年の東京都現代美術館での大規模個展「全景 1955-2006」以降の活躍は目覚ましい。2012年のドクメンタ13、2013年のヴェネチア・ビエンナーレと、美術界の世界的な祭典に作品を出品し、どちらの展示も異彩を放っていた。🅼

大竹伸朗は作品を作ることが存在理由であるというように制作のエネルギーが衰えることがない。宇和島を活動の拠点としていることと、作品を作っていないと自分が埋もれてしまう気がすることと無関係ではないらしい。展示の締切があろうとなかろうと、学芸員が訪ねて来ようが来まいが作り続けてきたのだという。

今回の展覧会はあの「全景 1955-2006」展ほど作品点数は多くはないけれど、作品カテゴリーと展示スペースの割り振りをよく考えた構成になっていて、この多作のアーティストの足跡や思考が捉えやすくなっている。

右は新作《残景0》2022年 展示風景 Photo/ 木奥惠三

展示は「自/他」「記憶」「時間」など7つのテーマによって構成されているが、これは作品を明確に7つに分類するということではなく、個々の作品はこれらのテーマにまたがることもあるし、テーマ自体が重なったり、ズレを見せながら展示空間が進んでいく意図がある。

絵画、コラージュ、版画、写真、立体、半立体、手製本、インスタレーション、サウンドなど一人のアーティストがこれほど多種多数の作品を生み出すのかと驚き、畏れ、もっと言えば呆れるばかりである。小さなものでは豆本のような手製本があるし、大きなものでは小屋とそれにセットのキャンピングトレーラーやカヌーを使ったインスタレーション、ビルの屋上に設置するインスタレーションもある。

《ダブ平&ニューシャネル》 1999年 公益財団法人 福武財団

大竹伸朗の仕事を見るたびに、その過剰なエネルギーに圧倒されるわけで、それはぜひ会場で体験していただくしかない。展覧会は東京国立近代美術館で2023年2月5日(日)まで開催されたあと、2023年5月3日(水・祝)―7月2日(日)愛媛県美術館に、その後、富山県美術館に巡回する。

《宇和島駅》 1997年 Photo/ 岡野圭
美術館のサインの文字と「宇和島駅」の文字が交差する。「宇和島駅」のサインが捨てられると聞いて引き取った。大竹にとってはこれも一つのコラージュ。

この展覧会には、2012年のドクメンタ13、2013年のヴェネチア・ビエンナーレに出品された作品がともに展示されている。ドクメンタ13で展示されたのは《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》。これこそが小屋+キャンピングトレーラーのインスタレーションで言ってみれば立体スクラップブックだ。小屋の屋根にはホーンスピーカーが設置されている。小屋の中の巨大なスクラップブックの背にも大きなウーハーが付いていて、その前に外付けモーターによって自動演奏を行うエレキギターがセットされている。音も出し、煙突からは煙も出るという作品である(美術館では煙は出せない)。

《モンシェリー:スクラップ小屋としての自画像》ドクメンタ13での展示風景。 2012年 Commissioned by dOCUMENTA(13) Photo/ 山本真人

ドクメンタ会場である整備された公園の一角に設置され、存在を主張していた。ちなみに展示会場は公園なので、小屋を建て、そこで展示するという方式を選ぶアーティストも多かったがたとえば小屋の中で映像を見せるなどが多く、小屋そのものをここまで作品にしているのは大竹だけだった。

《スクラップブック #71/宇和島》 2018–21年 33×85.5×40.4cm 574ページ / 17 kg 
Photo/ 岡野圭

2013年のヴェネチア・ビエンナーレに出品されたのは膨大なスクラップブック群である。今回の展覧会にも70冊以上が出品されているが、ヴェネチア・ビエンナーレのアルセナーレ会場の奥の方の一角に今回も使われているガラスケースがずらりと並び、その中にスクラップブックが並び、ライトに照らし出されていた。

細長いスペースにスクラップブックが並ぶ。1977年からの70冊以上。スクラップブック展示風景 Photo/ 木奥惠三

大竹伸朗 1955年東京都生まれ。 Photo/ 木奥惠三

大竹伸朗展

会期|2022年11月1日(火)- 2023年2月5日(日)
会場|東京国立近代美術館
開館時間|10:00 – 17:00[金・土曜日は10:00 – 20:00]入館は閉館30分前まで
休館日|月曜日[ただし2023年1月2日(月)、9日(月)は開館]、12月28日(水)- 1月1日(日)、1月10日(火)
お問い合わせ| 050-5541-8600(ハローダイヤル) 9:00 – 20:00

■巡回展
愛媛県美術館 2023年5月3日(水・祝)- 7月2日(日)
富山県美術館 2023年8月5日(土)- 9月18日(月・祝) [仮]

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