コーヒースタンド「BE A GOOD NEIGHBOR」(渋谷区千駄ヶ谷) 雑誌編集という仕事を離れて最初にやった仕事は、コーヒースタンドをつくることと、その意義を伝えることだった。

雑誌に作り手の個性や趣味が色濃く反映されるものとそうでないものがある。どちらが良いとか悪いとか、売れるとか売れないとか関係なく。岡本仁さんの作る雑誌は彼を形作る細胞の一部が織り込まれている。
 
一編集者時代からそうだったし、編集長になってからはそれが大がかりになったし、わかりやすくなった。『relax』とか彼が作る雑誌の発売日を待ち遠しく思うのは、彼に会いたいという気持ちと同じ質のものだと思う。
 
そんな岡本さんを巡る展覧会が開催されている。彼がどんなものを見て、どんなものを聴いて、どんな旅をしてきたのか、そうやってインプットしたものを、何を考えてどう編集して、あのメモラブルな数々の雑誌や書籍をアウトプットしてきたのだろう。
 
ネットの恩恵で今は誰しもが簡単にアウトプットできる時代だ。岡本さんにはなれないけど、この展覧会を見れば、なにをどうインプットするかの重要さとか、編集という技術や魔術(?)を学ぶチャンスになるんじゃないかな。それ、知っておいて損はないよ。
 
(文/岡本仁の元・部下:鈴木芳雄)
 

岡本さんからひとこと|
去年、今年と、自分がやってきたこととやっていることについて考える機会をいただいて、自分は何をやっていても同じことを伝えたいと思っているだけなのだと、あらためて思いました。それは、自分のメッセージがどのように受け止められたとしても、受け止めた人が歩き出すきっかけになればいいということだったんです。

岡本 仁(おかもと・ひとし)
北海道生まれ。マガジンハウスで『BRUTUS』『ku:nel』『relax』などの雑誌編集に携わった後、ランドスケーププロダクツに入社。同社の「カタチのないもの担当」として、編集を担当している。著書に『今日の買い物・新装版』(講談社)、『ぼくの鹿児島案内』『ぼくの香川案内』『ぼくらの岡山案内』(ともにランドスケーププロダクツ)、『果てしのない本の話』(本の雑誌社)、『ぼくの東京地図』 『また旅』(ともに京阪神エルマガジン社)などがある。最近は〈丸亀市猪熊弦一郎現代美術館〉での「いのくまさんとニューヨーク散歩」展や〈霧島アートの森〉での「楽しい編集って何だ?」展など、美術展の企画・監修に関わることが多い。

『relax』2000年10月号(マガジンハウス)

展示品より

「岡本仁が考える 楽しい編集ってなんだ?」展示風景(2021年、鹿児島県霧島アートの森)

開催概要

岡本仁の編集とそれにまつわる何やかや。

会期|2022年10月29日(土)- 2023年1月22日(日)
開室時間|9:00 – 21:00
休室日|月曜日[祝日は除く]、11月6日(日)、12月29日 – 1月3日
会場|生活工房ギャラリー[三軒茶屋・キャロットタワー3階]
お問い合わせ|03-5432-1543
□入場無料
□イベント
ゲストを招いて、編集のことやアートのこと(いい絵って何だ?)について対談します。
TALK1_11月27日(日)若木信吾(写真家、映像作家)×岡本仁
TALK2_12月11日(日)田島朗(『BRUTUS』編集長)×岡本仁
時間|14:00 – 15:30
会場|生活工房セミナールームAB(キャロットタワー5F)
料金|各回1,000円
定員|各回申込先着80名

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編集者

岡本 仁