美しいパリ!!5月初夏のセーヌ川。シテ島先端の柳の木が美しい新緑の葉をなびかせ、川沿いの大きなプラタナスの木も一斉に葉を大きく広げ、愛を語り合うカップルたちに心地よい木陰をつくっています。
そんなパリを駆け抜ける女ひとり、43歳2児の母あり。朝5時起床、6歳男子と11歳女子を学校に登校させ、自らは移民局から課せられた義務である語学学校に行くために小走りでパリを駆け抜ける。はい、それが私です。
はじめまして 坂田夏水です。日本では、空間デザインの会社の「夏水組」とインテリア物販店の「Decor Interior Tokyo」の2社の代表をしています。インテリアデザイナーとして、または古民家再生のプロとして、さらには働く母として、テレビや雑誌などのメディアに出たこともあり私のことを知っている方もいるかもしれませんが、パリに完全移住をしたことは知らない人が多いみたい。
実は、2022年に東京からパリに引っ越し、人生の旅に出て早1年となります。パリ移住に至る経緯と現在の生活、リアルなパリとこれからのことを発信していきたいと思います。
どうしてパリなのか。「子連れで完全移住」という決断に至るまで。
まずは最初に…どうしてパリなのかという問いに対して応えるなら、「パリが好き」だからです。加えて、どうして子連れ完全移住なのか、「それしか選択肢がない」からとして言いようがありません。
そんな回答だといけないと思いますが、動機は簡単なんです。私は28歳から独立して仕事をしていたこともあって、実は数年前から日本での仕事は天井が見えてしまっていた(というと生意気な感じですが)、いつか日本の外に出るんだと意気込んでおりました。私が仕事をしているインテリア業界は衣食住の「住」ですが、日本は衣と食は世界的にもレベルが高いとされますが、「住」は残念ながら衣食のレベルとは大きな差があると言われています。このまま日本のこの業界に居続ける人生と、新しい荒波に揉まれる人生の選択で、私は後者を選んだということです。
一方で私には2人の子供がいてシングルマザー。自分一人であればなんとかなるでしょうけれど、子供の人生まで棒に振ってはいけません。と思案していたものの、日本の教育と子供の未来について考えた結果、教育の面からも日本を出てたくさんの未来の友に会うべきだと思ったのです。
さて、ではどうやって…と時が過ぎていきましたが、ふとミラクルなことにフランス人である現夫と出会い、私と子供を一緒にフランスに連れて行ってくれるというではありませんか!!棚ぼたなのか、運命なのか?神様からの贈り物なのかわかりませんが、私の座右の銘「やるかやらないか。やる!」に従うと、いくか、いかないかなんて考えることもなく。それはもう、行くしか選択はないでしょう?笑
移住の準備。「行くしかない」という呪文
行くしかない!と決断したら、あとは何をすべきかのタスクを書き出し完了していくのみ。ビザ、学校、語学、家、お金と項目出ししてクリアしていきます(プライベートはね)。
不安要素はお仕事のこと。私がパリ在住で日本不在とした場合の2つの会社は大丈夫なのか。空間デザインの「夏水組」はオンラインミーティングと遠隔の現場確認ができるように各所調整しました。もう一つの「Decor Interior Tokyo」のインテリアショップはそもそも私がいなくても回っていたから安心、だって自慢できるほどスタッフが優秀なのだから。うるさい社長は不在くらいが良いのだよ、思っていますが実際はまだ未明なところ(そろそろ聞いてみようかな…笑)。
海外移住については、子供にとって悪いことはなかったと思っています。これからの時代を日本だけで生き抜くのは難しいだろうし、島国の日本にいて大人になるよりも、世界中の自由な生き方を子供のうちに見ておいた方が良いと思いました。子供の未来が良くなるために、親が適宜手を差し伸べことはできれば子供はすくすくと自分で育っていくものです。
仕事と家族が問題なくあり続けられるのであれば、あとはお金の問題だけ。しかしここも未明且つ未解決。これから良くなると信じて頑張ればなんとかなるでしょう、と決心アラバです。笑
ということで移住に必要な書類が揃い始め、あと3ヶ月後くらいに移動できそうじゃないか、と分かったら、パリ行きのフライトを確定。ここが済めばあとは残りの時間でまたタスクを完了していくのみ。
住んでいる家の解約日を不動産屋に伝え、役所やフランス大使館を周って書類を揃えVISA申請。大人の移住、特に婚姻VISAの取得は簡単ですが、義務教育中の子供の移住は難易度高めでした。フランスの住まいが子供にとって適切であるか、通学する学校からの証明書、そして一定期間無収入でも暮らせる貯蓄があるのかと万が一の保証人書類まで必要。子供の移住にこんなに過保護なのかと驚きましたが大切なことです。
日本出国まで残り10日間、何かやり残したことはないかと子供に聞いたら、「あともう一回、しゃぶしゃぶと焼き鳥と寿司を食べに行くことかな」と。
日本の家の荷物処分や移動が一番大変でした。知人に引き取ってもらったり大型の処分車を手配したり。家がやっとすっからかんになった!と思ったらもう飛行機に乗る時間まで余裕がない。ということで急いで不動産屋との立ち会い退去を終わらせ、空港へ移動。両親や親戚とのお見送りも涙は一切なく、「フランスについたらフレンチフライとサーモン、クロワッサンと海老食べよう!」って…食いしん坊家族で良かったです。
寂しければオンラインでいつでも会えるし、いざと言うときは12時間飛行機に乗れば帰れるのですから、そんなにおおごとではなかったですね。
まずは夫実家で…子供の学校と不安。
そうしてふと気づくと、春の3月にわたしたちはフランスにいました。子供達は初めてのフランスではなかったですし、久しぶりにみる重厚な建物と様々な肌の色の人たち、最初は旅行気分で美しく美味しいフランスを楽しんでいたと思います。
白く長い浜に打ち寄せる波。美しいカモメたちの先には鮮やかでおしゃれなヨットが浮いている。夕暮れの波打ち際でキスを交わすカップルたち。手を繋いで犬の散歩をする老夫婦。陽気にトップレスで海岸を闊歩するマダムは美しく、週末には素晴らしく豪勢な海鮮が並ぶマルシェが大通りに立ち並ぶ。
夫の実家はフランスの東側、ナントから車で一時間ほどさらに海側に行くリゾートタウンのラボールというところにあります。夫の両親が犬2匹と一緒に暮らす家に運よく慣れるまで居候。毎週末は友達が家にきて夜遅くまで話は尽きません。自分の意見を言わないのは、そこにあなたはいないということと一緒で「私はこう思う」と、大人だけでなく子供も話せることで教育が問われる。そしてお酒も入ってくると口論になることもしばしば。
しかし、どんなに熱くなっても最終的には、
“ Liberté, Égalité, Fraternité ”
日本語訳だと“自由と平等と博愛”のことでフランス人の共通の精神なのです。 様々な階級の民族がフランスで一緒に平和に暮らすために、争いごとを無くしお互いに愛を持って自由に生きることですが、侘び寂び本音と建前な日本人の思考回路との違いを今は興味深く観察しています。
子供たちは小学校と幼稚園が一緒になっている学校へ引っ越して3日後から登校開始。慣れない土地で時差ぼけもあり2週間ぐらい休ませてあげればいいのに、と思いますが、これは移住前から決まっていたこと。義務教育ですからよっぽどのことがなければ許されません。子供を学校に行かせることは親の義務ですからね。そんなわけで、可哀想ねと心配しながらも初登校。もちろんフランス語は話せません。6歳の男の子は自分がどんなに大変な状況にあるのかわからず楽しむ毎日。言葉がなくても楽しめるって素晴らしい。11歳の長女は「今までの人生の中で一番緊張して震えた」と。日本人が珍しいらしく、男の子に「君は美しい」とハグされ文化の違いに驚きつつ楽しんでいる様子。
そういう子供たちの反応を見ていたら、一番緊張していたのは私かもしれないと思ったりして。心配していた登校拒否、精神不安定、食欲不振なんて、どれも全く問題なく時が過ぎていきました。フランス語はまだ話せないけど、何を言っているのか注意して聞く時期というのは言語を習得するのに必要な時間なのだということも実体験として理解したり。やはり、案ずるよりってことなのかもしれませんね。
さて、初回は徒然なるままに書いてしまいましたが、次回は「パリのお店の不動産契約そして住む家探し」について書いてみたいと思っています。では次回まで!!! au revoir. à bientôt!
夏水
第2話、掲載! こちらからどうぞ
● 坂田夏水(さかたなつみ) さんて、こんなひと。
1980年生まれ。2004年武蔵野美術大学造形学部建築学科卒業。
アトリエ系設計事務所、工務店、不動産会社勤務を経て、2008年に空間デザイン会社として夏水組設立。女性の視点によるリノベーションや内装デザインで注目を集める。その他、商品企画のコンサルティングやプロダクトデザイン等を手掛ける。DIYやセルフリノベーションに関する書籍を多数執筆。
【メディア出演】
NHK「世界はほしいモノにあふれてる」 フジテレビ系列「セブンルール」「めざましテレビ」 日本テレビ系列「幸せ!ボンビーガール」外観・内装の立て直し屋 として出演 等に内装デザイナーとして多数メディア出演。
空間デザイン会社 夏水組
吉祥寺店舗 Decor Interior Tokyo
ネットショップ MATERIAL
パリ店舗 BOLANDO